第211回国会 参議院 外交防衛委員会 第11号 令和5年4月27日 令和五年四月二十七日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員の異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      田中 昌史君     武見 敬三君      堀井  巌君     加藤 明良君      矢倉 克夫君     安江 伸夫君  四月二十七日     辞任         補欠選任      加藤 明良君     堀井  巌君      松川 るい君     山本 啓介君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         阿達 雅志君     理 事                 岩本 剛人君                 佐藤 正久君                 小西 洋之君                 平木 大作君                 音喜多 駿君     委 員                 猪口 邦子君                 小野田紀美君                 加藤 明良君                 武見 敬三君                 中曽根弘文君                 堀井  巌君                 松川 るい君                 山本 啓介君                 吉川ゆうみ君                 羽田 次郎君                 福山 哲郎君                 安江 伸夫君                 金子 道仁君                 榛葉賀津也君                 山添  拓君                 伊波 洋一君                 高良 鉄美君    国務大臣        外務大臣     林  芳正君        防衛大臣     浜田 靖一君    事務局側        常任委員会専門        員        神田  茂君    政府参考人        法務省大臣官房        審議官      保坂 和人君        外務省大臣官房        審議官      石月 英雄君        外務省大臣官房        審議官      伊藤 茂樹君        外務省大臣官房        審議官      岩本 桂一君        外務省大臣官房        参事官      宮本 新吾君        外務省大臣官房        参事官      西永 知史君        外務省大臣官房        参事官      北村 俊博君        外務省大臣官房        参事官      片平  聡君        外務省大臣官房        参事官      松尾 裕敬君        外務省欧州局長  中込 正志君        防衛省防衛政策        局長       増田 和夫君        防衛省統合幕僚        監部総括官    大和 太郎君        防衛装備庁長官  土本 英樹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人の出席要求に関する件 ○日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間  における相互のアクセス及び協力の円滑化に関  する日本国とオーストラリアとの間の協定の締  結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付) ○日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイ  ルランド連合王国の軍隊との間における相互の  アクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグ  レートブリテン及び北アイルランド連合王国と  の間の協定の締結について承認を求めるの件(  内閣提出、衆議院送付) ○日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間  における相互のアクセス及び協力の円滑化に関  する日本国とオーストラリアとの間の協定の実  施に関する法律案(内閣提出、衆議院送付) ○日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイ  ルランド連合王国の軍隊との間における相互の  アクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグ  レートブリテン及び北アイルランド連合王国と  の間の協定の実施に関する法律案(内閣提出、  衆議院送付)     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  昨日、矢倉克夫君、田中昌史君及び堀井巌君が委員を辞任され、その補欠として安江伸夫君、武見敬三君及び加藤明良君が選任されました。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件外三案件の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省大臣官房審議官保坂和人君外十二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○委員長(阿達雅志君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件、日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の実施に関する法律案及び日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の実施に関する法律案、以上四案件を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 ○福山哲郎君 おはようございます。立憲民主党の福山でございます。よろしくお願いします。  両大臣におかれましては、連日の審議、御苦労さまでございます。  ちょっと通告ないんですけれども、一昨日、私、中国の日本人拘束事案について林大臣と幾つかやり取りさせていただきました。そのときに、中国の反スパイ法が、改正案が審議が始まったという報道があったと言ったら、何ともう成立したらしくて、一昨日の報道では審議があって、もう今日の朝刊には反スパイ法が成立をしているということで、当局の権限が強化をされたということだと思いますし、外国人も含めスパイ行為が疑われる個人への手荷物検査、国家の安全に危害を加える可能性がある国民の出国禁止措置が可能となるというような話と。駐在員や出張者が常に、まあ日本の場合に、この間も申し上げたように十万人いらっしゃるわけですから、非常に監視をされているような状況があるのかなと思いますが。  大臣、この間も注視をして説明を求めていきたいというふうに言っていただきました。それで十分結構なんですけれども、この改正スパイ法が成立をしたということで、早々に中国側に、大臣までがお出ましいただかなくてもいいと思いますが、事務当局側なりに、この中身について説明を求めるというのを大使館等に求めていただくことと併せて、まだ拘束されているアステラス社の社員の方の解放も含めて、こういったきっかけがあればより強くそのことを求められると思いますので、大臣、早急に対応をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) 前回も申し上げましたが、成立したということでございますので、更にしっかりと情報収集を続けるとともに説明を求めていくと、これは引き続きやってまいらなければいけないと思っておりますし、拘束事案については、引き続き、この早期の釈放、これを求めてまいりたいと思っております。 ○福山哲郎君 なるべく早く逆にこの説明を求めていただくことで、日本国としてはそのことを注視しているんだということ、相手に対するシグナルにもなりますので、そこは事務方でも結構ですので、早々によろしくお願いしたいと思います。  それでは、本法案についての質疑をさせていただきます。  先般も質疑がありましたので多少重複するところが、他の委員の方と重複するところがあることはお許しをいただければと思いますが、大臣に同志国の定義を前委員会ではお伺いをしましたが、もう一度お答えいただいてよろしいでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) 同志国という用語でございますが、一般に、ある外交課題において目的を共にする国を指す言葉として用いられていると承知をしておるところでございます。  したがいまして、いずれの国が同志国に当たるかについては、それぞれの外交課題について日本と目的を共にするかという観点から個別に判断をしていくと、こういうことになろうかと思います。 ○福山哲郎君 この間は質問には至らなかったんですけど、国家安全保障戦略に、前回十か所ぐらいと申し上げたんですけど、一個一個、同志国、数えたら、目次の一か所を含めると三十一か所も出てくるんですよ。実は二〇一三年の国家安全保障戦略には同志国という言葉は一つも出てこないんですね。  これはやっぱりどう考えてもある種の変化であり、ある種の、日本の政府としてのポジションが、この同志国ということに対して、期待も、それからそこの連携が重視だということも含めて、日本政府としての安全保障戦略の中で同志国の位置付けが変わったというか重くなったと受け止めざるを得ないと思うんです。  まずは、何で同志国というのはこの三十か所以上にもわたって表記をされることになったのか、防衛大臣、外務大臣共にそのことの自覚がおありかどうかはよく分かりませんが、事務方としてもどういう意識だったのかも含めて、もしお答えいただければと思います。 ○国務大臣(林芳正君) 確かにこの、例えば十年前とかですね、それぐらいのこと、まあ記憶がそう鮮明ではありませんが、同志国という言葉自体、我々もですけれども、ほかの国との話の中でもそれほど頻繁に使っていたかというとそうではなかったような気もいたしますが、先ほど申し上げたように、ある外交課題について目的を共にすると、こういうことであります。  国家安全保障戦略が初めて策定されて約九年と、こういうことですので、その間に世界のパワーバランスが変化をいたしまして、我が国周辺における軍備増強が加速している。また、九年前、余りこれもなかったんですが、経済安全保障ということが出てきている。そして、宇宙、サイバーといった新しい脅威と。安全保障環境にこれらの大きな変化が生じておりますので、こうした戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、この戦略で示した様々な課題において、やはり目的を共にする国と協力、連携を深めていくということが不可欠になってきていると、こういうことではないかというふうに思っております。 ○福山哲郎君 これ、大臣の言われた同志国というのは、外交戦略上における目的を共にすると。外交戦略上の目的というのは多分多岐にわたっているので、今の大臣の表現ですと、目的ごとでの同志国というのはひょっとしたら異なる可能性もあると。  今回、円滑化協定を結ぶ。ACSAもやっている。もちろん、豪州、英国は同志国のうちの一つなんだと思いますけれども、お手元に資料をお配りしたんですが、例えばEUの、これEUの文書なんですけれども、これ、EU理事会のプレスリリースで、今後十年間のEUの安全保障と防衛を強化するための戦略的羅針盤というものに、これ、マーカー付けたところなんですけど、ライク・マインデッド・カントリーズとありまして、そこは戦略的に志を同じくするというので、実はここには、EUのこの文書の中に、アメリカ、カナダ、ノルウェー、イギリス、日本、そしてほかの国々といって例示があって、ライク・マインデッド・カントリーズがいわゆる同志国なんですね。何でこのライク・マインデッド・カントリーズが同志国かというと、実は日本の国家安全保障戦略の英訳もまさにその表現なんですね。  そうすると、これ、EUの表記にあるこの表現と、例えば今の英国、豪州みたいな、日本の今の感覚でいうとちょっと同志国の幅が日本の方が狭いというような感じもしなくもないと。  実は、次のページ行っていただくと、次は中国なんですけど、これは中国日報なんですけど、中国とその同志国は、イギリスの人権状況に深い懸念を表明し、深刻な制度的人権主義、人種差別、ヘイトスピーチ、排外主義及び関連する暴力などが存在すると。中国が、ある意味でいうと、同志国と一緒に警鐘を鳴らしているわけですよね、イギリスに向けて。実は、別の資料を見ると、中国と一緒に同志国としてある国といって、二十九か国が実は中国の同志国として列挙されているんです、この英語表現で言うとですね。  その二十九か国を見ると、ミャンマーとかいろんな国があるんですけど、一つ一つ見ていくと、日本とも関係のいい国もそもそも含まれているし、まさに大臣が言われたように、同志国という表現を目的に応じて外交戦略上パートナーとしてみなすというのは理解をするんですが、EUという塊ですら日本のことを同志国という表現をしていると。日本は、じゃ、EUを同志国という表現するかというと、多分現状余りしていないと思います。  これ、豪州とかイギリスは、この円滑化協定を結ぶことで同志国という表現をイギリスと豪州についてするように日本はなるんでしょうか。外務大臣、そこはどうされるんでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) 恐らく、このRAAを結んでいるということは、その部隊間が相互に行き来をすることがあると。それは何の理由もなくやるわけではないので、何かの目的があってやると。その目的を達成するという意味でまさに同志国であると、こういうことであろうと思っておりますので、先ほど福山委員から、EUは我々のことを同志国だとこう書いてあるけれども、我々はなかなかそういうふうに言っていないというふうにお話がありましたが、ある意味で、このEUと日本はEPAも結んでおりますし、いろんなところで一緒に足並みをそろえてやるということはございますし、G7には、実は外相会合にもたしかサミットにもEUからも常時人が来ておられますので、そういった意味で、いろんなこの目的の中で、その目的については同志国だというケースは日本とEUの間でもあるのではないかというふうに思っております。 ○福山哲郎君 そうすると、中国も、先ほど申し上げた、二十九か国を同志国と呼んで、代表してステートメントとかを発表しているわけですが、EUも日本を同志国と言っていると。それは、それぞれの国の判断として、この目的については同志国と、いわゆるライク・マインデッド・グループ、ライク・マインデッド・カントリーズだというふうに言っているので、ライク・マインデッド・カントリーズというのはそれなりの幅があるというふうに言っておかないといけないのではないかと。  例えばACSAとか今回の円滑化協定みたいなものは同志国ですという話になってしまうと、少し日本のイメージしている同志国の幅が狭まるので、余りそうやって狭めるよりかは、ブロック化していくというか、こう枠をはめていくよりかは、いろんな目的によってこのライク・マインデッド・カントリーズという表現は、使い分けというのか、幅広く使っていくというイメージの方がいいのではないかと私は今回ちょっと感じたものですから、恐らく、その三十一か所にも及ぶ国家安全保障戦略上の同志国という表現もいろんな状況の中で使われることになると思いますので、そこの確認をさせていただきたいなと思って今日は質問したんです。  例えば共有の理念。もちろん自由、法の支配等々ありますけれども、この枠でいくと、各国とも自分もそうだと言い出さなくてもみんなそれが共有してきてしまうので、そこも含めて少し幅広く使っていただく方がいいかなと思うので、大臣、このことについて、英語表記についても含めて、ちょっとどういうお考えかなと思って確認をしました。 ○国務大臣(林芳正君) 今委員がおっしゃったことに全く違和感ないわけでございまして、同盟という、先ほど紹介していただきました国家安全保障戦略の英訳でございますが、「Maintain and Develop a Free and Open International Order and Strengthen Ties with its Ally, Like-minded Countries and Others」と、こういうことでありますので、まず同盟国があって、ライク・マインデッド・カントリーズがあって、アザーズと、こういうような記述に英語でなっておりますが、まさに同盟国という場合は、日米同盟のようなしっかりとしたこの同盟に関する合意、それを担保する条約のようなものがあって、通常はお互い安全保障上何らかの義務を負うと、こういうことだと思いますが、それの次にこれが出てくるということは、それではないということでございまして、じゃ、この定義をまさに委員がおっしゃるように余りがちがちやりますと、ここで線を引いて、ここから中と外と、こういうふうになってしまうと、やっぱりいろんな外交をやっていく上で余りプラスがあるようにも私も思いませんので、このことについてはこういう人たちがライクマインデッドであるということで、なるべく、最近のよく使われる言葉だとインクルーシブな概念としてなるべく広く、例えばいわゆるグローバルサウスにアプローチするときも一緒じゃないかと、こういうふうに言っていくと、そういう意味で使っていく方が戦略的に有用ではないかというふうに私も感じております。 ○福山哲郎君 私も本当に大臣の今の御答弁に全く同意をします。余り敵味方を分けるような、色分けするような状況は良くないし、しかしながら、同志国としての結び付きは今回の円滑化協定等も含めてやっていくという認識でいいのかなというふうに思いますので、よろしくお願いします。  前回の委員会でも他の委員から出ましたが、次のRAAの締結の国として出ているのはフランス、フィリピンという議論が出ておりますが、RAA締結の一定の条件として、ACSAが一定の条件だとしたときには、日本はACSA等締結している国がまだ、カナダやインドもございます。フランス、フィリピンもまだ交渉入っている状況ではないと思いますが、ACSAを締結しているカナダやインドは今どんなふうに考えておられるのか、いかがでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) このRAAですが、今まさに御審議をいただいているように、豪州、英国と署名済みでございます。  ACSAは、アメリカ、豪州、英国、フランス、カナダ、インド、こういう国々との間で締結をしておりまして、このRAAとACSA、今申し上げましたけれども、それ以外の国と締結するための交渉について今何か決まっているということはございませんで、同じような同種の協定の交渉を行っている国等はないというふうに考えております。 ○福山哲郎君 ありがとうございます。  ですから、逆に同志国イコールACSA、RAAが条件になってしまうと、何だ結局二か国だけじゃないかみたいな議論になるのは嫌だなと思っておるので、余りそこは特定しない方がいいかなという話は今の話に続きます。  フィリピンは、私、今のマルコス大統領になって多少落ち着いてきたと思いますし、前大統領のドゥテルテ大統領も麻薬の撲滅等では頑張られたと思いますが、ここはフィリピンとアメリカの同盟関係を一時期破棄をしたり、今は元に戻っていますけれども、少しフィリピンの外交戦略は政権によってこの数年ちょっと動いた部分があるので、特に軍事的な面でいう、安全保障的な面でいうところについてのRAAについては一応候補に挙がっているというふうにこの間もありましたけれども、そこは慎重かつフィリピンの政治状況見極めながら、今僕はマルコス大統領になって落ち着いているというふうに判断しておりますが、よろしくお願いしたいというふうに思います。  それで、二〇一一年の一月十日、我々の政権のときに、実は日韓の防衛大臣会談がありまして、当時、北澤防衛大臣が出席をされて、いわゆるGSOMIAとACSAについてもお互い議論をしていくという議論がこの防衛大臣会合で実は確認をされています。その後、御案内のようにGSOMIAは一回スタートして、自民党政権でも継続していただいてスタートして、そして向こう側の、文在寅政権の都合で一旦失効しました。で、もう一回、今回、尹大統領と岸田総理の再度の、この間の日韓首脳会談でもう一回GSOMIAは動き出したことは、僕は評価をしているんですが、実はこの二〇一一年、北澤防衛大臣のときには、実はACSAの議論もやろうと言っていたんですね。  先般、岸田総理と尹大統領で首脳会談があって、日米韓の連携はまさに北東アジアの安全保障上は非常に重要だと。お互いアメリカとの同盟関係があって、先ほどの同志国でいえば理念的には共有している国の一つだと思います。  もちろん、韓国は政権によって揺れ幅が大きいものですから、私もそのことについては一定の懸念を持っていますし、徴用工の問題等についても、突き刺さったとげがずっとこの七、八年あったことも理解をしておりますが、ACSAの韓国との交渉締結等については今どういう、どのぐらいの評価で、そういう議論は本当に始まっているのかどうかについて教えていただいていいでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) このRAA、ACSAについては、各国との安全保障、防衛協力を進める中で、まさに今ちょっと委員がおっしゃっていただいた相手国との二国間関係、それから自衛隊と相手国軍隊との協力の実績、相手国からの要望、これを総合的に勘案しつつ要否を検討してきておりまして、今の段階で何か決まっているということはないという状況でございます。 ○福山哲郎君 韓国との間はこの七、八年結構厳しかったものですから、そこは僕も一定理解をしていますが、日米韓の連携はやっぱりアジアの安全保障を考えたときには非常に重要でございますので、GSOMIAは動き出したのを含めて、相手側がありますから、こちら側から単に求めるだけではないと思っていますけれども、一定の可能性としてはあり得るのではないかなというふうに思っております。  先ほど話が出た中でいうと、EU全体という形でのこの円滑化協定に入るような見通しというのは、これは二国間ではないので、あり得るのかあり得ないのかも含めて、そういう状況はないんだというんだったらそれはそれでいいんですが、どう考えたらいいんでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) これ、先ほど韓国のときにお答えしたのと同じようなお答えになるわけですが、EUとそもそもそういうものがカテゴリカルにあり得るのかということもあろうかと思いますが、そういうことも踏まえて、先ほどの申し上げた二国間のものも踏まえて検討していくということになりますが、今何か決まっているということはございません。 ○福山哲郎君 今回、英国と豪州と円滑化協定を結ぶわけですけれども、二〇二〇年以降、英国と豪州との共同訓練等があるんですが、この間に、いわゆるこの円滑化協定の非常に重要な要素である第一次裁判権を行使をしないといけないような事案は発生したことがあるのかどうか、事実関係でお答えください。 ○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。  二〇二〇年一月から二〇二三年三月までにイギリスや豪州と行った共同訓練において、日本が刑事裁判権を行使しなければならないような事案は発生しておりません。  なお、協定第二十四条一において、一方の締約国が事故又は事件の通知を受領した場合には、できる限り速やかに他方の締約国に通報することとしており、円滑化協定に基づき、我が国において発生した事故又は事件を適切に把握することは可能となります。 ○福山哲郎君 確認です。これはこの間の委員会でもありましたけれども、協定の適用対象は災害とか共同演習とかが主なものだと思いますが、これは軍事的な有事も決して排除されないということで確認、もう一度よろしくお願いします。 ○政府参考人(増田和夫君) この協定が適用される協力活動につきましては、協定自体においてあらかじめ列挙して規定されているものではなく、各締約国が、自国の法令、時々の状況や政策判断に基づき検討し、その都度両締約国が相互に決定するものです。  このような意味において申し上げれば、武力攻撃事態等の状況において協力活動を実施することとなる可能性は協定上排除されているものではございませんが、日豪、日英間においては、基本的にこれまでにも活動実績のある共同訓練や災害救助といった活動が中心になると考えているところでございます。 ○福山哲郎君 これも重ねてですが、防衛義務は生じないということでよろしいですね。 ○政府参考人(増田和夫君) 本協定は、一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続及び同部隊の地位等を定めるものでありますが、自衛隊、豪国防軍及び英国軍に何らかの活動を行う義務を負わせるものではなく、本協定により締約国が相互防衛義務を負うことはありません。 ○福山哲郎君 もうこれで最後の質問にしますが、時間が来たので。  そうすると、円滑化協定があったとしても、演習や災害その他のところでの手続が非常に調整しやすくなると、やりやすくなるということは理解をするんですが、これが安全保障上非常に資することになるというような答弁等があるんですが、ここはなぜなんでしょうか。意義としてですね。  つまり、今までも合同練習をやっていて、その都度やっていた調整事項とか法的な事項については今回この円滑化協定でスムーズにできるようになったという状況の中で、何をもって、それは連携が強まったので安全保障上資すると言うのか、どういう意味合いで安全保障に資するというふうに言われているのかについてお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。 ○国務大臣(浜田靖一君) ありがとうございます。  円滑化協定は、一方の国の部隊が他方の国を訪問して活動を行う際の手続を定めることや同部隊の法的地位を明確にすること等を通じて、共同訓練や災害救助等の部隊間の協力活動の実施を円滑するとともに、部隊間の相互運用性の向上を図るものであります。  この協定の実施により、我が国と豪州及び英国との安全保障、防衛協力が更に促進され、インド太平洋地域の平和と安定が強固に支えられることが期待されます。  我が国の安全保障を確保するためには、一か国でも多くの国々と連携を強化することが極めて重要だと考えます。多角的、多層的な防衛協力・交流を積極的に推進し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて努めてまいりたいと考えております。 ○福山哲郎君 終わります。 ○羽田次郎君 立憲民主・社民の羽田次郎です。  まず、火曜日にも話題になりましたが、内戦中のスーダンからの退避について伺います。  邦人とその御家族の計四十五人が首都ハルツームから北東部のポートスーダンまで陸路で移動し、自衛隊機でジブチまで無事に輸送できたことは、外務省にとっても防衛省にとっても大きな成果だったと思います。適切な御判断と勇敢な任務遂行に敬意と感謝の念を抱いております。フランスや国際赤十字の協力で出国した十三名、そして所属する団体のミッションで陸路でエチオピアに出国された一名と、合わせて五十九人の出国希望者全員が無事に出国されたとの報道にも接し、安堵しているところです。  一昨年のアフガニスタン撤退時には、大使館やJICAに協力してくださった現地人スタッフの国外退避が問題とされましたが、今回、現地人スタッフの出国希望者はいなかったのかということと、現地人スタッフの現況把握はできているか、質問をいたします。 ○政府参考人(西永知史君) お答え申し上げます。  まず在留邦人の退避状況でございますけれども、現時点で約六十名の在留邦人のうち、四月二十四日までに、スーダンからの退避を希望していた全ての方が退避を終えているところでございます。一方、様々な理由、事情により、スーダン国内に在留されている方が少人数いると承知しております。これらの邦人とは緊密に連絡を取り合っておりますが、今のところ、生命、身体に影響があるとの情報には接しておりません。  引き続き、ジブチに立ち上げた臨時事務所において、関係各国とともに、関係各国とも緊密に連携しつつ、新たに退避を希望される方が出てくる可能性を踏まえ、スーダンに残留されている邦人への支援に全力を尽くす考えでございます。  また、大使館の現地職員の関係でございますけれども、今般のオペレーションにおいては、現地職員は特段の希望も確認されなかったことから対象とならなかった、対象とはなりませんでした。  今先生の方から御言及のあったアフガニスタンの事案でございますけれども、一昨年のアフガンの事案におきましては、タリバーン政権の政策上、特に外国勢力と協力していたアフガン人に命の危険が及び得る状況であったと判断されたことから、我が国政府やJICA等の政策目的の実現のために業務に従事していた現地職員を対象として輸送を行おうとしたものでございます。  今般の事案に関しましては、少なくとも現時点において、外国政府等のために勤務していたことを理由として命の危険が生じる状況に至っているとの判断はしかねるところであり、現時点におきましては、特段そのような外国人を対象とした輸送は行っていないところでございます。 ○羽田次郎君 ありがとうございます。確かに、アフガニスタンのときとは状況が違うのはおっしゃるとおりです。是非とも、今後とも在留邦人と現地のスタッフの状況というのをよく注視していただければと思います。  米国人で約一万六千人、英国人で約四千人が現地に滞在していて、退避に困難を来しているとの報道にも接しております。英国政府は、首都ハルツーム北三十キロほどの地点にある空港からキプロス共和国まで空路で自国民を輸送しているとのことですが、市内に集合して車列をつくって空港に向かうと危険が増すという政府の判断で、それぞれ自力で空港に移動している様子です。フランスやドイツは、日本同様、車列をつくり一気に自国民を退避させ、早々に希望者の出国を完了させているので、そういう意味では政府の判断で明暗が分かれているようにも見受けられます。英国民は、最初の四便で三百一人が無事に出国して、本日、次の四便も予定されているというふうに報道を拝見しておりますが、滑走路の損傷により離着陸が容易でないというような報道もされています。  国軍とRSFの七十二時間の停戦合意も残り時間僅かとなっておりますので、フランス軍は、他国からの要請があれば輸送支援をすると明言しておりました。  日本政府としてはどのような対応を考えているのでしょうか。また、同盟国、同志国からの支援要請は今のところあったかどうかという事実確認もお願いいたします。 ○政府参考人(西永知史君) お答え申し上げます。  複数の国、機関からの退避支援の要請でございますけれども、その要請は受けておりますけれども、関係国との関係もありまして、その詳細について申し上げることは差し控えたいというふうに思います。  なお、四月二十四日、ポートスーダンからジブチに退避する際、自衛隊機の余席利用について要望を聴取いたしましたが、その当時、複数の退避オペレーションが行われていたため、特段、自衛隊機の余席利用について要望がなかったというふうに承知しております。 ○羽田次郎君 いろいろやはり要望はあるんでしょうが、もちろん我が国の、邦人の退避が最重要ですし、もちろん我が国の自衛隊を余りにも危険にさらすような状況になってもいけないと思いますので、その辺、そうはいっても、他国や国際機関から今までも支援を受けておりますので、可能な限り積極的な御対応をいただけたらと思います。  次に、議題となっている日豪、日英部隊間協力円滑化協定について伺います。  協定第一条の(c)では訪問部隊の定義を定めています。日豪、日英RAA共に同様の規定ぶりであるところ、日豪RAAの合意議事録では、「両締約国は、訪問部隊の定義に関し、個人及び集団を含める意図を有する。」との記載があります。他方、日英RAAにはこのような合意議事録は付されていません。  訪問部隊の定義に関する両協定の相違について御説明を願います。 ○政府参考人(岩本桂一君) ただいま御指摘のとおり、日豪、日英、いずれの協定におきましても、第一条(c)において同一の文言によって訪問部隊の定義を規定しております。したがって、その内容に差異はございません。  なお、これも御指摘のありましたとおり、日豪の合意議事録の一においては、訪問部隊には個人及び集団を含める意図を有する旨を規定しておりますが、この規定は、訪問部隊の解釈を明確化する趣旨で、いかなる者が訪問部隊を構成し得るかにつき両国の認識を一致させることを意図して作成されたものであります。  一方、日英の合意議事録には同様の規定はございませんが、訪問部隊の意味するところについて、この日豪、日英、両協定の間に差異はない、こういうことでございます。 ○羽田次郎君 ありがとうございます。合意議事録ではそういうことは書かれていないけど、まあ差異はないということで。  防衛省のウェブサイトに掲載されている日豪防衛協力に関する資料には、防衛省と豪州国防省との間で、また陸上自衛隊と豪州陸軍との間で、それぞれ職員、要員の相互派遣が行われているというふうに承知しております。  こうした個人についても日豪RAAの適用を受けるのかどうか、その点について伺います。 ○政府参考人(岩本桂一君) まず、この協定が適用される協力活動としましては、基本的に、これまでにも活動実績のある共同訓練や災害援助といった活動が中心となるものと考えております。一方、御指摘のような我が国と相手国との部隊により相互に派遣された要員が本協定の適用対象となる可能性も排除されていないと考えております。  いずれにしましても、個別具体的な協力活動の内容は、両締約国の法令の認める範囲内で、その都度両国間で適切に判断し、相互に決定することになっております。 ○羽田次郎君 こうした協定ができたことによって様々円滑化されるという趣旨で合意しているわけですから、個人もそこに含まれるということで承知いたしました。  協定第七条の五では、訪問部隊又は文民構成員の公用のための資材等を税の免除を受けて接受国に輸入することができると規定されています。この点、日英RAAでは接受国の法令によって認められる範囲内でとの条件が付されていますが、これはなぜなのか理由をお示しいただきたいのと、また、自衛隊が訪問部隊として公用のための資材等を持ち込む際に豪州と英国でどのような違いが生じるかについて、もし違いがあれば御説明ください。 ○政府参考人(中込正志君) お答え申し上げます。  今御指摘ありました協定七条五でございますけれども、専ら訪問部隊又は文民構成員の公用のための物品で売却を目的としていないものの免税輸入等について規定をしておりまして、日英間の協定においては公用品の税の免除を受けた輸入は接受国の法令の認める範囲内に限定されておりますけれども、日豪間の協定においてはこのような限定はございません。  これら二本の協定については、それぞれの相手国との間で交渉を重ねた結果、署名に至ったものでございまして、日英の協定についても同様でございます。  それから、自衛隊による英国及びオーストラリアへの資材の輸入に際しての免税でございますけれども、イギリスについては英国の法令によって認められる範囲のものを税の免除を受けて輸入することが認められますけれども、オーストラリアにつきましては、この協定が適用される協力活動のためにオーストラリアを訪問する自衛隊は、この協定の発効によりまして、輸入物品に対する関税及び財・サービス税及びオーストラリアに持ち込む燃料に係る燃料税を免除されるよう、オーストラリアにおける国内手続が進められているということでございます。 ○羽田次郎君 ありがとうございます。  協定第七条六及び七は、訪問部隊の構成員及び文民構成員の合理的な数量の身回り品、家具、家庭用品、自動車一台について税の免除を受けて接受国に輸入することができると規定されています。これは、訪問部隊の要員が比較的長期にわたって接受国に滞在することを想定した規定と理解してよろしいのでしょうか。また、どのような方々が、こうした自動車ですとか、そうしたものを輸入するものと想定されているのでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) この両協定では、派遣国の部隊が一時的に接受国に滞在する際の部隊間の協力活動を円滑にすることなどを目的としております。  その前提で、本協定が適用される協力活動の期間については、協定上には規定はございません。例えば、共同訓練の事前調査等を目的として一部の者が長期間滞在する場合等、その内容いかんによっては長期間に及ぶ可能性もございます。そのような場合も含め、訪問部隊の構成員又は文民構成員が個人使用を目的として家具及び家庭用品や自動車を輸入する可能性は否定されないことから、こういった可能性に対応するべく本規定を設けたものでございます。 ○羽田次郎君 一時的な滞在という意味では、その自動車ですとか家具ですとかというのを輸入することに若干違和感も感じるところはあるんですが、まあ一定の滞在もされる人を想定されているということで承知いたしました。  協定第十七条の一では、訪問部隊及び文民構成員の接受国における資材、備品及び役務の取得、利用に対する租税等について、接受国の部隊に適用される条件と同等の条件で取得、利用することができると規定されていますが、ここで言う接受国の部隊に適用される条件について、自衛隊が日本国内で資材、需品、備品及び役務を取得、利用するに際して租税等の特例措置があればお示しください。 ○政府参考人(土本英樹君) お答え申し上げます。  自衛隊が日本国内で資材、需品、備品及び役務を取得する又は利用する際の税の適用につきましては、例えば、物品を調達する場合には商品、製品の販売などに課される消費税相当分を支払しているほか、自動車検査証の交付等を受ける者等に対して課される自動車重量税などを支払っているところでございます。  自衛隊が日本国内において物品等を取得又は利用する場合における税を免除されるものといたしましては、例えば、艦船等で使用する軽油に関する軽油引取税や航空機で使用する航空タービン燃料に関する航空機燃料税などがございます。  また、自衛隊が日本国内で役務を利用する場合におきましては税が免除されるものはないというところでございます。 ○羽田次郎君 ありがとうございます。  時間がちょっと迫っておりますので一つ飛ばして、昨年の決算委員会で私も取り上げたんですが、警告決議となっていたT4中等練習機等で使用するための救命無線機の不適切な調達について政府が講じた措置が、今年一月、国会に提出されました。  令和二年度決算検査報告で指摘されたのは、空自のT4中等練習機等で使用するため既存の救命無線機の後継機として調達した新無線機が、調達要求事項の検討が不十分で、着水後正常に機能しない可能性があり、また、寸法が既存の無線機より大きく適切に収納できず、平成二十九、三十両年度に調達した五百十五個のうち四百九十六個が運用に支障が生じるおそれがあり使用されていないというずさんな内容でした。  政府が講じた措置は、使用されていなかったものの一部は令和五年八月より順次使用を開始すべく取組を行っているところで、残りについても令和六年度より使用を開始すべく取組を行っているというものでした。  令和五年、六年度からそれぞれ使用が開始されるものの内訳はどのようになっているかということと、ここまで使用開始が遅れている理由、そして、着水後正常に機能しない可能性が指摘されていたんですが、その問題が解消される見込みなのかということと、救命無線機が、今回の指摘を踏まえて、こうした問題に対する再発防止策として調達に関する確認体制の強化が示されていますが、具体的な体制強化策について御説明ください。 ○政府参考人(土本英樹君) まず、内訳と不具合の解消状況という点でございますが、個人携帯用救命無線機に係る会計検査院からの指摘に対しまして、当該無線機の使用に向けた措置といたしまして、取得したにもかかわらず使用できていない四百九十六個の無線機のうち、T7及びU125用の百四個につきましては、収納袋を交換し、令和五年八月から順次使用を開始できる見込みでございます。残りのT4用の三百九十二個につきましては、着水後正常に機能するよう作動方式の改修案を作成したところでございます。今後、改修案の妥当性の確認を経まして、改修を行った上で、令和六年度から使用開始を予定しているところでございます。  あと、委員御指摘のもう一点の再発防止策の関係でございますが、航空自衛隊におきましては、問題点を教訓事項といたしまして抽出し、これを周知し、再発防止策を図っているところでございます。  具体的には、まず第一点目といたしまして、機能発揮に問題がないように適切な仕様を設定しているかを管理職による確認を実施するという点、二点目といたしましては、調達部門や運用部門間の連携の強化ということで、例えば今回の無線機で申し上げれば、無線機を担当する部署とそれを収納する救命装備品を担当する部署の間で、関係部署間で相互確認をさせるなどのチェック体制を強化しているということで、再発防止策の徹底を図っているところでございます。 ○羽田次郎君 時間となりますのでここで終わりますが、隊員の命に関わる大切な問題ですので、是非ともしっかりとした対応をお願いします。 ○金子道仁君 日本維新の会、金子道仁です。  先般、協定について質問させていただきましたので、本日は別の議題について、まず最初にASEANアウトルックについてお伺いしていきたいと思います。  軽井沢外相会合のコミュニケの二つ目、インド太平洋が記載されました。ウクライナ、ロシアの後にインド太平洋が書かれたということは、今回の外相会談でこの地域が重視されたという一つの表れであり、非常に評価できることではないかと考えております。  我が国はASEANと、今年、友好関係、友好協力関係の五十周年を迎えて、十二月、年末には特別首脳会談がこちら日本で行われると承知しておりますが、今後、ASEANとの連携強化に向けてどのような協力、ビジョンを打ち出していかれるのか、お伺いしたいと思います。  またあわせて、このコミュニケの二ポツ、太平洋島嶼諸国に関しても、それぞれが掲げるビジョンについての言及があって、そしてそれらを踏まえて、我が国はどのようにこのビジョンに伴走して我が国の目指す自由で開かれたインド、アジア太平洋の実現を目指していくのか、その辺りのビジョンについて、外務大臣から最初にお伺いします。 ○国務大臣(林芳正君) 東南アジアと太平洋島嶼国は、共に自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた重要地域でございます。  ASEANですが、FOIPと包摂性、透明性、国際法の尊重といった本質的な原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを掲げております。我が国は、この海洋協力、連結性、SDGs、経済等といったAOIPの優先協力分野に沿って具体的な協力を実施してきております。  日・ASEAN特別首脳会議では、将来の日・ASEAN関係を見据えた新たな協力のビジョン、そして幅広い具体的な協力を打ち出しまして、包括的かつ戦略的な関係を強化していく考えでございます。具体的な内容につきましては、今後、ASEAN側と緊密に調整していくことになりますが、その際には当然、AOIPの下での取組、これを強く支持するということになると考えております。  また、太平洋島嶼国ですが、我が国はこれまでもニーズに寄り添いながら様々な支援を行ってきております。特に、地域の一体性を含む太平洋島嶼国自身のブルーパシフィック大陸のための二〇五〇年戦略、これを強く支持していくこととしております。そのためにも、相手国政府との連携を強化していくということが重要でございまして、我が国としては、太平洋・島サミットや二国間会談等を通じて太平洋島嶼国との関係を深めてきております。  引き続き、太平洋島嶼国自身のニーズ、これをよく踏まえながら、ODAを戦略的に活用し、関係強化を図っていきたいと考えております。 ○金子道仁君 ありがとうございます。  そうしたら、一つ一つ分野、今四つの分野についてというお話をいただきましたので、四つの分野、順に見ていきたいと思います。  一つ目が、海洋安全保障に関する協力という分野です。これまで、日・ASEANのAOIPの協力の取組例として、この海洋安全保障の分野に関しては、IUU、違法、無報告、無規制の違法な漁業の取締りに関する研修が行われてきたということですが、東南アジア諸国において、この海洋安全保障面のニーズはどのようなものと我が国として把握しているのか、また、我が国にとっては、望ましい安全保障環境を創設していくというその戦略的な目的の実現のために、今後、ODAだけではなくてOSAの戦略的な実施の可能性もあると思いますが、外務省の見解をお聞かせください。 ○政府参考人(北村俊博君) お答えいたします。  まず、ニーズでございますけれども、東南アジアは、委員御指摘のとおり重要なシーレーンが位置する地域でございます。海洋安全の確保やIUU漁業対策等、海洋安全保障に関する能力構築支援のニーズがあると承知をしております。  そのため、日本としましては、これまでODAを活用しまして、ベトナムやフィリピン、インドネシアを始めとする東南アジアの諸国の沿岸警備隊と、それに対しまして巡視船等の供与、あるいは沿岸監視レーダー等の海上保安関連機材の供与、あるいは専門家の派遣や研修の実施による人材育成等を実施しまして海洋安全保障に関する能力強化の支援を実施してきたところでございます。  また、OSA、これにつきましては、特に昨年末に閣議決定されました国家安全保障戦略におきましてOSAの創設、これが方針として示されております。それ以降、各国の軍あるいは政府からOSAの支援の可能性についての照会、あるいは要請が寄せられておりますので、一定のニーズがあるものと考えているところでございます。今年度につきましては、まずはフィリピン、マレーシア等の軍等を対象として、海洋安全保障の分野の能力向上に資する機材供与等を想定した専門的な調査を外部の事業者に委託して行うこととしているところでございます。  東南アジアの諸国の海洋安全保障に関する能力が強化されまして、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序、これが発展することは、海洋国家である我が国の安全保障環境の改善にも資するというふうに考えています。  政府としましては、ODA、あるいはこの今のOSA、これを戦略的に活用しまして、引き続き海洋安全保障の分野での協力を進めてまいりたいと考えております。 ○金子道仁君 是非よろしくお願いいたします。特にまた、今年、今年度始まるOSAが、この地域の安定のために、平和の構築のために良い事例として積み重ねられていくことを本当に期待しておりますので、是非、こちらの方、進めていただければと思っております。  二つ目の分野としては、質の高いインフラということで、我が国の事例としては幾つか、ベトナム・ホーチミンでの鉄道の整備であったり、カンボジアでの港のコンテナの整備等、ハード面での協力について例示されております。  他方、ハードのインフラといえば、やはり中国がASEANに対して日本よりはるかに規模の大きい整備を行っている中で、我が国がASEANにおいて質の高いインフラ整備を行うというのは具体的にどのような内容を考えておられるのでしょうか。 ○政府参考人(北村俊博君) お答えいたします。  我が国は、二〇二〇年に打ち出しました日・ASEAN連携イニシアチブの下で、ASEAN共同体の統合深化、これを後押しするために、ASEANによる連結性の強化を、その取組を積極的に支援してきているところでございます。その際、我が国は、委員御指摘のとおり、質の高いインフラ、この整備を支援しているところでございます。これは、開放性、透明性、経済性、債務持続可能性などの要素を重視したものでございます。  二〇一九年のG20大阪サミットにおいて日本のイニシアチブの下で採択されました質の高いインフラ投資に関するG20原則、これも、ここでもこうした要素が確認をされているところでございます。  我が国は、こうしたハード面での協力に加えまして、技術協力によるソフト面での協力を組み合わせることで相乗効果を生み出して、持続可能性を高めているところでございます。例えば、インドネシアのパティンバン港、ここでは、自動車ターミナル等の港湾整備事業に加えまして、ソフト面でも港の運営管理能力強化プロジェクト、これを実施しているところでございます。また、委員御指摘のカンボジアのシハヌークビル港、ここでは、港湾整備事業を実施するとともに、コンテナターミナルの経営あるいは技術向上プロジェクト、それを実施してきているところでございます。  引き続き、東南アジア各国のニーズを踏まえながら、質の高いインフラ、この整備を支援して、これらの国々との関係強化を図っていきたいと考えているところでございます。 ○金子道仁君 やはり、中国のこの一帯一路という大きなビジョンに対して、日本とASEANがどのように協力して、このより優れた質の高いインフラを造っていくのか。やはり、まず一つはビジョンの対決が非常に重要ではないかと思います。  よく、債務のわながないことが質の高いインフラの一つだということも聞きましたけれども、これは当然のことであって、我が国として、ASEANと協力して一帯一路に勝るような良いビジョンが提示されることを期待しております。特にまた、ソフト面での協力についても期待をしております。  同じく、質の高いインフラということで、島嶼国、遠隔地に低コスト、高速のインターネット利用環境を整備する事業を行うということが事例に挙げられていますが、この具体的な案件、方法、また戦略性について御説明ください。 ○政府参考人(北村俊博君) お答えします。  委員御指摘の案件、これは、シンガポールにございます衛星通信事業者でカシフィック・ブロードバンド・サテライト・インターナショナル、そういう会社がございまして、ここが、インドネシアやフィリピンの遠隔地、あるいは太平洋の島嶼国等に対しまして、衛星を利用して低コストで高速のインターネット利用環境を提供する、そういう事業を行っております。この事業は二〇二〇年から運用が開始されたものであると承知をしております。  この事業には、アジア開発銀行、そこから総額五千万ドルを融資しておりまして、そのうちの二千五百万ドル、それが、JICAが出資しますアジアインフラパートナーシップ信託基金、そこを活用したものになってございます。  我が国としましては、この信託基金を通じまして、アジア及び太平洋の地域の国々に対して民間セクターによる質の高い持続可能な様々なインフラ事業を支援しておりまして、この事業もその一環として実施しているものでございます。 ○金子道仁君 アジア開発銀行として五千万ドル、約五十億円の出資がなされている、これは多いのか少ないのかというところですけれども。  昨年九月、タイのバンコクでファーウェイがアジア太平洋ISPサミットを開催して、二〇三〇年に向けてアジア太平洋でオール光のインターネット構築をすると。産業だけでなくて、大学、教育機関も、また家庭も包括するような光ネットの構築を訴えているわけです。  そのような太平洋諸国のインターネットのインフラ整備をどこが取るのかという、そのような競争が起こっていると思うんですが、こうした中国の動きを踏まえた上で、我々は、このカシフィック・ブロードバンド・サテライト・インターナショナル・リミテッドですか、と行っていくこの戦略が十分な競争力を有しているのでしょうか、お聞かせください。 ○国務大臣(林芳正君) 今お話のありましたこの我が国が支援をしているインターネット整備事業でございますが、インフラの脆弱性や利用コストの高さなどの理由からそれまではインターネットを利用できなかったこの東南アジア諸国の遠隔地や太平洋島嶼国の人々に対しまして、衛星を利用してこのインターネットの利用環境、これを提供するものでございまして、我が国が主導するDFFT、信頼性のある自由なデータ流通、これを推進していく上でも意義のあるインフラ事業であると認識しております。  この本事業で利用されている衛星の管制業務をスカパーJSAT社が実施しておりまして、我が国の宇宙分野の技術が国際協力に貢献している好事例と言えると考えております。  人口の少ない遠隔地や島嶼国において運用が開始されまして、多くのユーザーがこれを利用できる環境が整えられていることから、本事業は一定の競争力を持っているものと考えられまして、政府として、引き続きこのような事業を支援していきたいと考えております。 ○金子道仁君 スカパーが入っている、日本の企業が加わっている案件としても優良な案件だとは思うんです。ただ、ファーウェイのような巨大な民間中国企業がそこのライバルのように立っている。で、我が国としても、官民を連携しながら、この投資が無駄にならないような、良い島嶼諸国にとっての選択肢となるような案件となるように、引き続きよく見守って進めていただければと思います。  三つ目の分野はSDGsの感染症対策ですが、こちらもやはり中国がASEAN諸国の感染症対策についてもかなりの活動をしていると。中国はコロナの感染期においてASEAN諸国にかなり大量のワクチンを提供したと報道で確認しておりますが、供与国や供与数、無償や有償の区別等はどのような状況だったんでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) ただいま御指摘のとおり、中国は二〇二〇年以降、新型コロナのワクチンを自国で開発、生産し、この東南アジアを始めとしてアフリカ、中南米等の途上国に援助や輸出などを通じて供与を行ってきたと承知をしております。  ASEAN諸国に対しましては、報道によりますと、中国政府は二〇二二年六月までに六億回分のワクチンを提供した旨述べているという具合に承知しております。  その上で、各国の内訳、無償、有償の区分含めて様々断片的な情報はございますけれども、他国の政策でございますので、現時点でちょっと網羅的に把握をしてお答えすることは困難であることを御了承いただきたいと思います。 ○金子道仁君 一番困ったときにワクチンを提供するという協力と、我が国のように今ASEAN感染症対策センターを設置してこれから活動していくというところだと、ASEANの人たちにとってどのように映るか。正直、一番困ったところに薬が届いた方がインパクトとしては強かったのかなと思うので、今後、このASEAN感染症対策センターがどのような活動をしてASEANの地域の感染症対策に貢献していくか、これが非常に重要だと思います。  そういった点で、我が国として、ASEANはこの新型コロナ感染症によってどのような被害を受けて、経済再建また社会活動の回復に向けて課題を持っていると把握し、またその課題に対してこのASEAN感染症対策センターはどのような役割を果たしていく見通しでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) 新型コロナ感染拡大によりまして、二〇二〇年のASEAN経済、これは一九九八年以来となるマイナス成長を記録するなど、社会的、経済的に大きな打撃を受けたところでございます。経済再建そして社会活動の回復に向けまして、ASEANは包括的復興枠組みを掲げて、保健システム強化、人間の安全保障の強化、そして広域経済統合の推進、包摂的なDXの加速、こういった課題を掲げているわけでございます。  このASEAN感染症対策センターでございますが、準備、探知、対応、この三つの柱から成る機能を担い、情報共有、分析、人材育成、そしてイノベーションといった分野で横断的役割を果たすことで、ASEAN全体の対応能力、そして新たな感染症の拡大の予防、これに貢献することが期待をされておるところでございます。 ○金子道仁君 まさにこれからの感染症予防のためにこの機関が活躍することを期待しております。そのためにも、情報共有網の形成とありますけれども、我が国も含めたASEANと我が国のこの感染症対策の情報共有をしていく、今後の予防をしていく、そのような形でASEANに我が国が貢献していくことは非常に重要だと思いますので、是非こちらの方もしっかりと進めていただければと思っております。  ちょっと時間が足りなくなってきたので、一つ問いを飛ばさせていただいて、次の大きな問いとして、スーダンへの自衛隊機の派遣について次にお伺いしたいと思います。既に本日も羽田委員からスーダンについて御質問がありましたので、重複しないところについて質問させていただけたらと思います。  先般、佐藤筆頭理事が資料を出していただいて、非常に勉強させていただきました。それを踏まえながら今日質問させていただきたいと思っておりますが、今回のスーダンの邦人輸送については、自衛隊法の八十四条の四、在外邦人等の輸送の実施として行われたということです。この八十四の四の実施要件の中に、予想される危険を避けるための方策を講じることができると認められたとありますけれども、今回のような状況、国軍とRSFの戦闘が続く中で、我が国政府としては、どのようにスーダン当局と調整を行い、安全が確保できたと判断されたのか、お伺いします。 ○政府参考人(西永知史君) お答え申し上げます。  国際法上、一般に自衛隊を他国の領域に派遣する際には、派遣先国との関係で国際法上の問題が生じないように当該国の同意を得る必要がございます。今般の輸送に当たっても、スーダン共和国政府の同意を得ているところでございます。  その上で、どのような安全確保ができると判断したのかという御質問でございますけれども、例えば今回使用したポートスーダン空港につきましては、スーダン政府の空港職員が、スーダン政府の空港職員が管制を実施し、空港周辺の治安についても当局により統制されていたことから、自衛隊機が問題なく離着陸できる状態にあったと判断してございます。  各種の情報収集などを通じ、こうしたことなどを総合的に勘案した結果、予想される危険及びこれを避けるための方策を講ずることができるとの判断に至ったものでございます。 ○金子道仁君 ありがとうございます。  今のスーダン当局との調整、そのポートスーダンにおける安全は確保されていたということですが、ポートスーダンとハルツームの間の民間人のこの移動に関してはどうだったのか、やはり微妙なところは当然あったと思います。我が国は幸いにしてその車列に対しての攻撃等がなかったけれども、報道によると、同行していた国軍の兵士から、今ここは危ないからすぐ食事をしないで出ていきなさいみたいなことを言われたと民間人の方も言っておられますし、フランスの車列は一部攻撃を受けたということもありますので、やはり非常にこの安全確保ができたかどうかという判断は難しい判断だと思います。  その中で、今答弁にあったように、総合的に判断したというところ、つまり、完全に予想される危険を避けることができるかどうかといえば、リスクは残っている中で総合的に判断し、今回実施し、それが吉と出たというか、成功したということなのではないかと、説明を伺って、考えております。  今回の邦人保護、無事に脱出できたことは喜ばしいことですが、七十二時間の停戦合意という、こういう条件があったからできたわけで、最悪の事態、つまり、こういう停戦合意がなく、内戦激化のために邦人が自力でハルツームを脱出できなかった可能性もあるかと思うんですが、そのような状況の中で邦人が脱出できなかった場合、自衛隊の八十四条三、在外邦人の保護措置は行われるんでしょうか。 ○国務大臣(浜田靖一君) 個別具体的な状況に即して判断する必要があることから、一概にお答えすることはできない点は御理解をいただきたいと思います。  その上で、在外邦人の保護措置は、多くの日本人が海外で広く活躍をし、テロなど緊急事態に巻き込まれる可能性がある中で、領域国の同意がある場合には武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応できるようにする必要があるとの認識の下、平和安全法制の国会審議を経て新たに自衛隊の行動として加えたものであります。  これは、領域国政府の同意が及ぶ範囲、すなわちその領域において権力が維持されている範囲においては、国家に準ずる組織が存在しないとの前提の下で、領域国の同意に基づく武力の行使を伴わない警察的な活動として行われるものであります。  そして、武力の行使に当たらないことを担保するため、外国の同意があることのほか、保護措置を行う場所において、外国の権限がある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為が行われることがないと認められることといった要件が課されております。  いずれにしても、自衛隊法第八十四条の三に規定する要件が満たされる限りにおいては、自衛隊は在外邦人等の警護、救出を行うことができます。 ○金子道仁君 当該外国の権限がある当局が公共の安全と秩序の維持に当たって、戦闘行為が行われてない、この辺りがまさに今回微妙なところだと思います。判断は難しいと思いますが、是非、要件に縛られることなく、総合的に判断し、国民の保護当たっていただければと思います。  最後に、岸田総理が、ゴールデンウイーク、アフリカに訪問されますが、非常にすごいタイミングだなと感じるわけです。スーダンでのこの衝突について何らかのメッセージを発する予定があるんでしょうか。 ○委員長(阿達雅志君) 時間ですので、答弁は簡潔に願います。 ○国務大臣(林芳正君) はい。  今回の岸田総理によるアフリカ歴訪の機会には様々な予定をしておりますが、スーダン情勢に関しては、私自身としても、二十四日、サウジアラビア及びUAEの外相との会談を行い、スーダンの情勢安定に向けた協力を確認したところでございます。  日本として、引き続き、G7等の同志国、そして地域の関係国とも連携しつつ、あらゆる機会を捉えて、スーダンに対して敵対行為の完全な停止と民政移管プロセスへの復帰を求めていく考えでございます。 ○金子道仁君 ありがとうございました。質問を終わります。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、加藤明良君が委員を辞任され、その補欠として堀井巌君が選任されました。     ───────────── ○榛葉賀津也君 国民民主党の榛葉賀津也でございます。  私からも、このスーダンの邦人救出に防衛省・自衛隊並びに外務省を始めとする関係各位がすばらしいお仕事をしていただいて、心から感謝と敬意を申し上げ、とりわけ現地でリスクを負いながらも邦人の人命救助に御尽力をされた全ての皆さんに心からの感謝と敬意を申し上げたいと思います。  一昨日、このスーダンの話を少しさせていただいたんですが、振り返りますと、あの二〇〇九年の、いわゆるダルフール戦争で、ICC、国際刑事裁判所でスーダンのバシール大統領に逮捕状が実は出ていまして、ところが、その後、バシール大統領は、このICC締約国に、いろんなところ訪問するんですけれども、一切逮捕されなかったわけでございます。  このICCの問題についてまた後日いつかやりたいと思いますが、今もウクライナの話がございましたが、三月十七日にICCがプーチン大統領とリボワベロワ大統領全権代表、これはもう子供の権利担当という方ですが、に逮捕状を出しています。恐らく逮捕されないんでしょうけれども。これの問題もまた後日やりたいと思いますが。  逮捕状が出たのが三月十七日なんですね。岸田総理がウクライナを電撃訪問したのが二十一日ですから、この逮捕状が出た後、ウクライナを電撃訪問されたと。なかなか絶妙なタイミングだったと思いますし、それなりにやっぱりインパクトもあったというふうに覚えています。  岸田総理が、惨劇のあったブチャを訪れてこう言っているんですね。深刻な国際法違反で、その責任は問われるべき、戦争犯罪及びその他の残虐行為の不処罰があってはならないと。全くそのとおりでございまして、この総理の御発言を強く支持をするわけでございます。  ただ、このときふと思ったのが、であるならば、なぜ日本は、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約、いわゆるジェノサイド条約、これに日本は批准してないわけでございますけれども、ブチャに行くタイミングで日本はこれにも批准するんだというメッセージを出せばもっとインパクトがあると思うんですけれども、まず、G7諸国はこのジェノサイド条約、批准状況を教えてください。 ○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。  G7諸国のうち、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの六か国がジェノサイド条約を締結してございます。 ○榛葉賀津也君 つまりは締結しているということなんですが、それでは、日本がこのジェノサイド条約に批准しない理由というのは何なんでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) 我が国は、集団殺害犯罪のように国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した者が処罰されずに済まされてはならないと考えております。こうした犯罪の撲滅と予防に貢献するという考えの下で、ICCローマ規程加盟国としてその義務を誠実に履行しておるところでございます。  一方、このジェノサイド条約ですが、締約国に対して集団殺害の行為等を国内法により犯罪化する義務を課しておるということでございます。したがいまして、このジェノサイド条約を締結するためには、条約上の義務とそして国内法制との関係、これを整理する必要があると考えております。  同条約の締結について真剣な検討を進めるべく、関係省庁との協議を深めているところでございます。 ○榛葉賀津也君 先日、私は人権問題について議論しましたが、このジェノサイドという言葉は、いわゆるナチス・ドイツ、ホロコーストの時代からポーランドで生まれた言葉で、極めて国際的には重要な問題でございます。  我が国は、私もずっとブルーリボンしていますけれども、これ拉致問題含めて、人権という切り口から正論をしっかり言っていくということが大事なんですが、日本がこの条約に批准しないというのは私はよろしくないと思っています。  一部、旧日本軍の南京大虐殺が惹起されるのを警戒して批准しないのではないかなどといううがった見方もあるんですけれども、そういった関係性はあるんでしょうか。 ○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。  先ほど大臣から御答弁ございましたとおり、ジェノサイド条約を締結するには、条約上の義務と国内法制との関係を整理、必要があると考えておりまして、現在、同条約の締結について真剣な検討を進めるべく関係省庁との協議を深めているところでございますが、それが今条約を締結していない理由の最大の理由でございます。 ○榛葉賀津也君 いや、だから、もうずうっと時間たっているんですよ。  ネット上含めて各国は、この南京大虐殺を含めてやましいことあるんじゃないかといううがった見方が、批准しない理由として実際ささやかれているわけでございます。これ、批准しないことによってそういう根も葉もないことを言われるということはよろしくないと思いますが、それは全く関係ないんですね。明言してください。 ○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。  我が国としては、ジェノサイドのように国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した者が処罰されずに済まされてはならないと考えてございます。御指摘の点については当たらないと考えております。 ○榛葉賀津也君 あのロシアの行為のみならず、中国のウイグルに対する人権問題等々、我々毅然とこの国際社会に対して人権問題からのアプローチというものをしていかなければならない中で、我が国がこのジェノサイド条約に批准しないというのは、私はいかがなものかなと思っています。とりわけ今重要な局面に来ていますので、是非この問題も議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それでは、一昨日の積み残しについて議論を続けたいと思いますけれども、RAAの協定第二十一条の四において刑事裁判権の競合の場合等の規定がされていますけれども、RAA第二十一条の四に言う公務中か公務外かをめぐって、いわゆる日英間、日豪間で認識が一致しない場合というのは想定されるんでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) まず、御指摘のこの公務執行中、これにつきましては、訪問部隊の構成員又は文民構成員として、法令、規則、上官の命令又は軍慣習によって要求され又は権限付けられる全ての任務又は役務を執行中であることを指しております。こうした考え方については、日豪、日英それぞれの間で一致しているところでございます。 ○榛葉賀津也君 この二十七条には、合同委員会の設置、一昨日も山添先生が非常に意義のある議論をされていましたが、合同委員会の設置で、あらかじめここで公務の範囲について締約国である程度一致させる必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) 今御指摘のこの合同委員会でございますが、これは、この協定の実施に関して協議を必要とする全ての事項に関する協議機関として設置することになっております。  仮に、公務執行中であるか否かをめぐって双方の認識が一致しない場合には、個別の事案ごとに合同委員会において協議する、このことについては、日豪、日英いずれの場合もそれぞれの間で一致をしているところでございます。 ○榛葉賀津也君 私は、短い間でしたけれども与党をやらせていただいて、その際に防衛副大臣と有り難いことに外務副大臣も務めさせていただいて、この日米問題、一番やっぱり多かったのが交通事故関係若しくは飲酒運転だったんですね。これなかなか厄介なんです、軍人軍属含めて。特にこの日豪、日英のRAAについても、このいわゆる公の催事事ですね、これで飲酒を含めた、いかなる場合であっても飲酒運転は公務として取り扱わないという厳しいルールを作っておかないと、日本側の被害者が泣き寝入りするようなことがあってはならないと思いますので、やはりこの飲酒運転、これは絶対許さないんだという扱いにする必要があると思うんですけれども、どうでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) このいわゆる飲酒運転につきましては、日本が接受国となる場合、上司の命令であっても、また公式行事への出席であっても、車両の運転手が、運転者が飲酒をしていた場合には、飲酒運転の事実をもって、豪州又は英国が裁判権を有するような公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪に当たらないものとして日本側が裁判権を行使すべき事案となると、この点は日豪及び日英間で確認をしているところでございます。 ○榛葉賀津也君 ありがとうございます。  それでは、身柄の引渡しのタイミングについてお伺いしたいんですけれども、日本側が裁判権を行使すべき訪問部隊の構成員又は文民構成員の身柄を豪州若しくは英国側が確保した場合、この引渡しのタイミングというのは起訴前になるのか、起訴後になるのか、どうなんでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) 接受国側が裁判権を行使すべき事案におきましては、御指摘のように、派遣国によって被疑者の身柄が一時的に確保される場合は、起訴前であっても被疑者の身柄は接受国側に引き渡されることになっております。 ○榛葉賀津也君 最後に、このRAAにおける文民構成員というのがあるんですけれども、いわゆるこれはコントラクター、これの被用者等は含まれないという理解でよろしいでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) 御指摘のとおり、ここに言います文民構成員にはコントラクターは含まれません。 ○榛葉賀津也君 ありがとうございました。  実りある議論ができましたので、以上で終わります。 ○委員長(阿達雅志君) 暫時休憩いたします。    午前十一時二十五分休憩      ─────・─────    午前十一時三十三分開会 ○委員長(阿達雅志君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件外三案件を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。 ○山添拓君 日本共産党の山添拓です。  日豪、日英部隊間協力円滑化協定に関して伺います。  両協定は、日米同盟を中心に、自衛隊の海外活動と外国軍との共同の軍事活動を強化しようとするものです。その動きは、昨年十二月の安保三文書改定に前後して加速してきました。  資料をお配りしています。昨年十二月六日、米豪2プラス2、外務・国防担当閣僚会議が行われました。その共同声明は、三か国の防衛協力活動を強化すること、日本に対してオーストラリアにおける戦力態勢イニシアチブへの参加を強化するよう求めることを決定したと述べ、オースティン米国防長官は記者会見でもこの点に言及しています。  防衛大臣に伺います。要請に応じたのですか。 ○国務大臣(浜田靖一君) 昨年十二月に開催された米豪2プラス2において御指摘のような発言があったことは承知をしておりますが、我が国としては具体的な対応を決定したものではありません。  防衛省としては、引き続き、豪州の恵まれた訓練環境などを生かして、三か国間の訓練や活動を拡大することで、自衛隊の能力向上のみならず、日米豪三か国間の相互運用性の向上や連携強化を図りたい考えであります。 ○山添拓君 ただ、米豪日三か国防衛相会合における合意に基づいてということですから、米豪の要請に応えたわけではないという今大臣の答弁でしたけれども、基本的には既に三者で合意している内容ですよね。 ○国務大臣(浜田靖一君) 今後の対応については予断を持ってお答えすることが困難であることを御理解いただきたいと思います。 ○山添拓君 米豪2プラス2の三日後、十二月九日、日豪2プラス2、外務・防衛閣僚会議が開かれました。安保三文書改定の一週間前のことです。外務大臣は、日豪関係を同志国連携の中核などと評価し、軍事的連携の強化を主張しております。  資料の二枚目を御覧ください。この共同声明で、将来のF35を含む日本の戦闘機のオーストラリアへのローテーション配備を見据えた日本のF35による機動展開訓練などについて検討を加速するとしています。  防衛大臣に伺います。  F35のローテーション配備とは、どういうことですか。 ○国務大臣(浜田靖一君) 昨年十二月の日豪2プラス2においては、豪州との間で安全保障、防衛協力を深化させ、より強化された相互運用性を構築するといったことで、することで合意をいたしました。その具体的な取組の一つとして、将来のF35を含む日本の戦闘機のオーストラリアへのローテーション展開を見据えた日本のF35による機動展開訓練を実施することとしております。このローテーション展開等に関する具体的な計画、活動の態様や期間について等については、今後検討していくことになります。  いずれにせよ、日豪間の安全保障、防衛協力を更に深化させていくためには、自衛隊と豪州国防軍がより実践的な形で連携を強化していくことが重要と考えております。引き続き、自由で開かれたインド太平洋の地域の実現に向けて、豪州との防衛協力を一層強化していく考えであります。 ○山添拓君 日本の戦闘機を海外に常駐させる配備計画というのは前代未聞です。自衛隊は日本を守るためだと言ってきました。オーストラリアへの配備は日本の平和と安全とどう関係するんですか。 ○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。  F35、自衛隊の戦闘機を常駐させるということよりも、我々が考えておりますのは、豪州には大変広大な訓練、演習環境がございます。そうした恵まれた訓練環境を生かしまして、自衛隊のその戦技技量の向上、そしてまた日豪両国間やその他の国も含めた訓練を拡大する、そういうことによりまして、自衛隊の能力向上とともに、米国も含めた日米豪三国間の相互運用性の向上や連携強化を図りたいと考えているところでございます。  このローテーション展開につきましては、自衛隊の部隊を一定期間豪州国内に展開することを意味しておりまして、戦闘機などにつきましても、その訓練を行うその期間、例えば定期的に一定期間行くというようなことを念頭に置いているところでございます。 ○山添拓君 いや、配備って書いているんですよ、このポンチ絵には。ローテーション配備と。  で、伺いますけれども、自衛隊の戦闘機をオーストラリアに配備するその法的根拠は何ですか。 ○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。  配備と書いておりますけれども、これはその常駐ということを意味しているわけではなくて、私たちとしては、先ほど御説明しましたように、一定期間訓練などのために定期的にオーストラリアに行くということを意味しているということでございます。    〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕 ○山添拓君 ローテーションですから定期的に入れ替えてということでしょうけれども、しかし、配備と、恒常的に置いていこうということには変わりがないわけです。そして、法的根拠についてはお答えがありませんでした。  憲法九条の下で自衛隊の活動は他国の軍隊とは異なる制約を受けます。訓練だということを口実に自由に海外に配備することは許されないものです。  資料の一ページに戻っていただきますが、日米、日豪、失礼、米豪2プラス2の共同声明は、オーストラリアにおける米軍の能力を高めるため、爆撃機や戦闘機などのローテーション配備を拡充するという内容も含まれております。また、最大六機の戦略爆撃機B52をオーストラリア北部の米軍基地に、失礼、空軍基地に配備する計画とも報じられております。中国への抑止力強化が狙いとされ、オースティン米国防長官は会見で、中国は地域の平和と安定を脅かしている、日米豪の三国間防衛協力を強化すると述べました。  政府は日本の防衛政策は特定の国や地域を念頭に置いたものではないと繰り返していますが、米側は対中戦略だということをはっきりさせています。  外務大臣に伺います。  こうした米側の意図を是認した上で日豪の協力強化を進めるのですね。 ○国務大臣(林芳正君) 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、我が国としては、国家防衛戦略にもあるとおり、自由で開かれた国際秩序の維持強化のために協力する同志国等との連携を強化してきておりまして、本協定もこの連携強化を効果的に進めるための取組の一つでございます。  豪州との間では、我が国の国家防衛戦略におきまして、日米防衛協力に次ぐ緊密な協力関係を構築し、本協定等の整備も踏まえて、豪州における訓練の実施やローテーション展開等を図って、日米豪の協力も念頭に連携していくとしております。  昨年十月には、長期的な安全保障協力の方向性を明確に示す羅針盤となる、新たな安全保障協力に関する日豪共同宣言を発出しておりまして、引き続き、日豪の安全保障、防衛協力を拡大、充実すべく取り組んでまいります。    〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕 ○山添拓君 いや、対中戦略だということを米側ははっきり述べているのですが、それに加担していくということでよろしいのですか。 ○国務大臣(林芳正君) 本協定について申し上げますと、自衛隊と豪州国防軍の部隊が他方の国を訪問して実施する共同訓練、災害救助等の協力活動を円滑にするもので、ためのものであり、中国を含めて特定の国等を念頭に置いたものではないと考えております。 ○山添拓君 そうおっしゃるんですけれども、その大本には、米国が進めている戦力の分散と体制の強化、同盟国、パートナー国の能力強化、根底にはあるわけですね。その一環として日豪関係の強化も求められていると。そして、対中包囲網を強化しようとするものだと米側は言っているわけですから、こうして軍事的対抗を強めれば、地域の緊張関係はむしろ高まることになってしまいます。軍事同盟があるわけではないオーストラリアとなし崩しに軍事的一体化を進めることは許されないと指摘したいと思います。  次に、両協定と死刑制度について伺います。  協定第二十一条の討議の記録によれば、オーストラリアや英国の軍人軍属に死刑が科され得る十分な可能性があるときには被疑者の引渡しに協力しない場合があるとされます。これらの国には死刑がないために、死刑のある日本の刑事裁判を受けることを拒否させ得るというものです。その上で、討議の記録は、関係当局による死刑を求刑しないとの保証によって相手国が引渡しに応じ得るとしています。  前回の質疑で、この保証とは地方検察庁の検事正が行うもので、死刑が求刑されないという通知をいうのだと説明がありました。  法務省に伺います。  オーストラリアや英国の軍人軍属については、日本人であれば死刑を求刑しているような事件であっても死刑を求刑しないという保証を行うのですか。 ○政府参考人(保坂和人君) まず、その死刑求刑するかどうかが、という判断が前提になるわけでございますが、この死刑を求刑しないという通知につきましても、その他国から被疑者の引渡しを受けるために必要な限りにおいて様々な考慮をした上で、その死刑を求刑することがないというふうな措置をとることができる場合には、それが可能な場合にはその通知をするということでございまして、何かあえてその死刑を求刑しないという方向でその意見を変えるというものではなくて、あくまで検察官がどういう意見を述べるかということを前提として、それが、そういう意見を述べる、あるいは死刑を求刑しないということが通知できる場合にはその通知をするという、そういう趣旨でございます。 ○山添拓君 そうすると、やはりできない場合があり得るということですか。死刑に相当するような事件の場合には引渡しを求めることができない、保証ができないので引渡しは求められない、こういうことになるんですか。 ○政府参考人(保坂和人君) 繰り返しですけれども、このような通知をするかどうかにつきましては、その犯罪の内容ですとか法定刑や裁判例による量刑の傾向等、そういった情報に照らして、その死刑の適用を求める場合に相当しない事案であるときにはその旨を示すということでございますので、それができるかどうかはその事案事案によるということでございます。 ○山添拓君 そうなんですよ。事案事案によるのが当然だと思うんですね。ところが、死刑を求刑しないという保証ができるのだと、そういう討議の記録での記載となっています。ですから、今法務省がおっしゃったように、死刑を求刑し得るような事件の場合には、これはその保証ができませんから、やはり重大事件であればあるほど引渡しを求められないという事態が起こり得るということだと言えます。  外務省に伺います。  従来、オーストラリアや英国の軍隊が日本国内で訓練を行う際には、その都度両国間で口上書等を交換し、刑事裁判権もあらかじめ確認してきているということでありました。死刑の適用についてはどのように合意してきたんですか。 ○政府参考人(岩本桂一君) この先ほどの御質問の件でございますけれども、御指摘のありましたとおり、これまでは、その個別の活動内容を踏まえまして、訪問部隊の刑事裁判権を含む所要の事項について、両国間で外交ルートを通じた口上書の交換等を通じてあらかじめ確認するなどの方法で適切に対応をしてきております。  また、一般国際法の考えを踏まえた一般的な内容を確認するものでございまして、死刑が科され得る十分な可能性のある場合の具体的な対応について、今回のお出ししております両協定にあるような具体的な内容は含めておりません。 ○山添拓君 これまでは確認をしてきていなかった、つまり、死刑に相当するような事件が起こったときにはどのように対応するのか、これは何ら合意せずに受け入れてきたということですか。 ○政府参考人(岩本桂一君) 繰り返しになりますが、この死刑が科され得る十分な可能性のある場合の具体的な対応について、今回の協定にあるような具体的な内容は含めてきておりません。  その上で、個々の対応につきましては、派遣国と受入れ国との間で個別の事案に応じて協議を行って決定する、こういう形になっております。 ○山添拓君 その都度協議ということになろうかと思います。要するに、そういう曖昧な合意で受入れを進めてきたということなんでしょうか。死刑事件に相当する重大な事件は起こり得ないだろうと、たかをくくってきたということですか。 ○政府参考人(岩本桂一君) そういう考えではございません。 ○山添拓君 しかし、合意がなかったわけですよ。もし日本側が裁判権を行使するといった場合には、これは前回の質疑でもありましたが、オーストラリアは、自由権規約第二選択議定書でその管轄下にある者に死刑が執行されないことを確保する義務を負っております。それを放棄させるということはできませんから、大変デリケートな問題があるんだと思うんです。ですから、前回、従来の扱いについてお答えをいただけなかったのも、この死刑の問題が根底にあるのではないかと私は思います。  今回の両協定は、その狙いも内容も問題があり、承認はできません。同時に、死刑対象事件における協定の不平等さ、法務省からあったように、重大事件ほど引渡しを求め得ないケースがあり得ることを浮き彫りにした、これは日本の死刑制度に問題があるということを浮き彫りにしていると思います。  世界の百八か国で死刑は廃止されています。十年以上執行がないなど事実上の廃止を加えると百四十四か国に上ります。死刑を存続、執行している国は、日本や北朝鮮、イランなど五十五か国、先進国では日本と米国だけです。その米国も、バイデン大統領が死刑廃止を公約とし、連邦レベルでの死刑が一時停止をされました。死刑の廃止に進むべきだと考えます。  その点を指摘をしまして、私の質問を終わります。     ───────────── ○委員長(阿達雅志君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、松川るい君が委員を辞任され、その補欠として山本啓介君が選任されました。     ───────────── ○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。  明日、四月二十八日は主権回復の日とされています。しかし、七十一年前の一九五二年四月二十八日、本土の主権回復から切り離され、沖縄、奄美は米国統治とされました。沖縄ではこの日が屈辱の日、奄美では痛恨の日と呼んでいます。  これ、元々沖縄戦がきっかけになっているということで、今般話題にいろいろなっていますけれども、屋良覚書というのは復帰の一年前にできたものじゃないんです。長々とこの屈辱の日からの歴史が入っている重要なものなんです。ですから、復帰したらすぐ何かに使える、軍事的に使えるというのは大問題だということを指摘しておきます。  そして、領土問題をこれだけ声高に主張している人たちが、この国土の一部を、沖縄ですね、これを差し出したというのは屈辱感じないんですかと。主権回復したと喜ぶという姿を見て、沖縄県民はまた差別されたと、こういうふうに深く失望したわけです。  一七七六年七月四日、アメリカの独立宣言が出されました。独立の理由の一部を御紹介します。立法府の同意を得ることなく、平時においてもこの地に常備軍を駐留させている、外国軍隊を文民統制から独立させ、かつ優位とするような措置をとってきた、我々の間に大規模な軍隊を宿営させる法律、見せかけばかりの、この州の方ですね、ステートの住民に対して殺人を犯すようなことがあった場合でも、見せかけばかりの裁判によって彼らを処罰から免れさせる法律を作った、こういうことに言及しているわけです。  要するに、裁判権の放棄や形式的裁判で起訴をしないということを問題にしているのであって、それは独立戦争が起こるほどの重大な主権の問題であったというわけです。日本の地位協定における裁判権の扱いは、これ主権が実質的に回復していないのではないかと申し上げて、質問に入りたいと思います。  今回の協定は、浜田防衛大臣が、先ほどもありました、中国を含め特定の国を念頭に置いたものではございませんと答弁されていることはもう存じております。しかし、今回の締結の意味は、やはり西側が結束して中ロなどと対峙するという大きなこの構図の中で考えるべきだと思います。対外的にもそのようなイメージで受け取られる協定だと思います。この点を踏まえ、本日も、西側が結束して中ロと対峙するなどと単純に物事を考えて大丈夫なのかという観点から質問をいたします。  二〇二一年にAUKUSが結成された際には、マレーシアとインドネシアが懸念を表明しました。今年三月、AUKUS首脳会議において、オーストラリアの原潜配備計画の道筋が合意されました。このときにも、マレーシアとインドネシアが声明を出しました。マレーシアの声明は、軍拡競争を引き起こしたり地域の平和と安全に影響を与えたりする可能性のある挑発を控えることを強調すると、我が国の水域における原潜の運用に関して、東南アジア非核兵器地帯条約、東南アジア平和・自由・中立地帯構想を全面的に尊重し、遵守することを求めるものだったと承知しております。インドネシアも核に関して声明を出しています。  マレーシアは、この海洋権益に関し中国と問題を抱えていますが、このAUKUSの枠組みによって、自国周辺で中国との緊張が高まったり原潜がやってくるということに警戒をしております。中国の高圧的な海洋進出に苦しめられている東南アジア諸国は、民主主義陣営の軍事的プレゼンスを歓迎するなどと安易に考えてはいけないということです。  外務省にお尋ねします。  日本がオーストラリアやイギリスと軍事面で協力関係を深めていくことがアジアにおける緊張を高めると、東南アジアにおいてネガティブに受け止められることがあってはいけないと思います。この点はどのように把握しているのでしょうか。 ○政府参考人(岩本桂一君) ただいま御指摘のありました、まず二〇二一年九月のAUKUSの発表以降、御指摘の国を含めた一部のASEAN諸国から様々な反応が示されていることは承知をしております。  その上で、このAUKUSの三か国につきましては、AUKUSの取組がインド太平洋地域の平和と安定に貢献するものであること、そして通常兵器搭載型の原子力潜水艦能力に係る計画が三か国としての核不拡散上のコミットメントを実行するもので、引き続きIAEAと関連の協議を行うことを強調しておりまして、各国に対してこのような説明を繰り返し行ってきているものと理解しております。  日本政府としましては、引き続き、このAUKUS三か国と関係各国との間で緊密に意思疎通が行われ、AUKUSの取組に対する理解が一層深まっていくことが重要と考えております。その上で、御指摘のありました日本と豪州、英国との協力関係、これについても各国の理解が得られていく、このように考えております。 ○高良鉄美君 AUKUS、今般のこのイギリスと豪州、そしてアメリカです。これが今、枠組みとなっているわけですよね。それで、このAUKUSができてオーストラリアのこの領域内を原潜が通るということは、マレーシア、インドネシアにとっては受け入れ難いということに近いと思います。  配付資料を御覧ください。東南アジア非核兵器地帯条約です。条約では、米国、英国、フランス、中国、ロシアの核兵器国五か国に対して議定書が署名のために公開されています。五か国のうち実際に署名した国はありません。しかし、AUKUS首脳会議で原潜配備の道筋が発表された後の先月下旬、中国外相が、ASEAN事務総長に対して、東南アジア非核兵器地帯条約に喜んで署名する用意があると述べました。  中国のこのアプローチですが、ASEANの立場を想像してみますと、このAUKUSよりもASEANに寄り添った手法のように思います。このASEANの人たちは、AUKUSよりも中国の方が地域の平和に貢献するというように見えたのかもしれないという見方もできるわけです。  前にもお話ししましたが、願望と情勢分析は別です。こういったことを想像し、本当に大丈夫か、AUKUSがかえってASEANを中国に近づけていないか、政府も国会も慎重に状況を見極める必要があるのではないでしょうか。  外務省にお尋ねしますけれども、この中国の東南アジア非核兵器条約の署名に関する意思表明に対するASEANの反応について何か情報ありますでしょうか。 ○政府参考人(伊藤茂樹君) お答えいたします。  中国外交部の発表によりますと、先月に行われた秦剛外交部長とカオ・キムホンASEAN事務総長との会談におきまして、秦剛部長は、中国側は率先して東南アジア非核兵器地帯条約議定書に調印し、ASEANと団結、ウイン・ウインを提唱し、地域の安全、安定を共に守りたいと考えている旨述べたと承知しております。  これに対するASEAN諸国の反応につきましては、第三国間のやり取りでございまして政府として網羅的に把握しているわけではございませんけれども、例えば、ルトノ・インドネシア外相は、今月上旬に、ASEANとして東南アジア非核兵器地帯条約議定書の署名に関し、核兵器国と交渉を開始するつもりである旨述べたと報じられているものと承知をしております。  我が国としましては、東南アジア非核兵器地帯条約は、東南アジア地域における平和と安定及び国際的な核軍縮の進展に資するものであると考えておりまして、引き続き関連する動向を注視してまいりたいと考えています。 ○高良鉄美君 今の中にはもう既に述べたことがありましたけれども。  配付資料二、外務省のウェブサイトからの引用です。これは、ASEANの努力、太枠で書いている部分ですね。このASEANの枠組み、安全保障の枠組みですけれども、ASEANプラス3、あるいは東アジア首脳会議、そして拡大ASEAN国防相会議、こういうものがいろいろあるわけです。数十年にわたって、この日本、中国、米国を包摂する枠組みをつくろうとASEAN諸国は努力をされてきたということです。  そんなときに中国をにらんだ仕組みであるAUKUSがつくられ、地域で緊張が高まることは、ASEANにとってはこれまでの努力を土足で踏みにじられるようなものなのかもしれません。まして、中国やロシアと対峙するからこっちの味方に付けという接し方は余りにも無神経、傲慢と映るかもしれません。ASEANのこれまでの努力を理解し、尊重し、敬意を持って接することが必要だと思います。  そこで、林大臣に伺いますけれども、AUKUSの創設とその動きがASEANをAUKUS構成国あるいは西側から遠ざけたということはないでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) AUKUSの取組はインド太平洋の平和と安定に資するものであり、日本は一貫して支持をしてきております。  その上で、豪英米三か国は、AUKUSの取組がこの地域の平和と安定に貢献するものであるという旨を各国に対して説明を繰り返し行ってきているものと理解しております。  繰り返しとなりますが、日本政府としては、引き続きAUKUS三か国と関係各国との間で緊密に意思疎通が行われまして、AUKUSの取組に対する理解が一層深まっていくことが重要と考えております。国際秩序の根幹が揺らぎ、地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日本としては同盟国、同志国間のネットワークを重層的に構築、拡大していくことが重要であると考えておりまして、AUKUS三か国やASEAN諸国を含めて、関係国と引き続き緊密に連携していきたいと考えております。 ○高良鉄美君 私が言いたいのは、やっぱりアジアを見てくださいということなんです、この三か国のAUKUSの問題ではなくて。  東南アジアのオーストラリア、イギリスに対する目というのは調べにくいんですけれども、これも資料にありますけれども、シンガポールの元外交次官、キショール・マブバニ氏の書いたものがありました。どういう人かということを検索しましたら、今年三月の朝日新聞に、シンガポール元国連大使で、〇一年と〇二年に国連安保理議長を務めたと紹介され、二〇二一年四月の読売新聞には、アジア屈指の論客として知られるシンガポール国立大名誉フェローと紹介されていました。この記事は、オーストラリアとニュージーランドだけじゃなく、ASEANの日本を見る目にも当てはまるというような示唆に富むものだと思います。  日本語のものを読んでいきたいんですけれども、この一ページ目、オーストラリアとニュージーランドは、アジアにおける孤独な欧米の前哨基地として立ち往生することになるだろうと。困難な地政学的課題に対する感情的に快適な解決策を見付けることは致命的ですと。これがAUKUSの根本的な問題です。過去に懸けるのはいつも間違いです。未来に懸ける方がよい。こう書いていますね。  二ページ目、オーストラリアはインドネシア及び他のASEAN近隣諸国と緊密な関係を築く必要があります。そして、これがAUKUSの決定を非常に危険なものにしている理由です。オーストラリアは、近隣諸国とより緊密に協力することによってセキュリティーの強化に取り組むつもりはないという合図を送りました。遠くの方とやる、近隣のアジアではないと。  この後に書かれているインドネシアの姿勢の解説も示唆に富みます。AUKUSに対するインドネシアの不安は相当に強いものだそうです。  象徴的に言えば、オーストラリアはキューバのようになる可能性があります。支配的な地域大国の意思に屈することを拒否しますが、ほとんどの近隣諸国から政治的に孤立している激しく独立した国とあります。  キューバのようになるというのは非常に印象的な表現だと思います。ちなみに日本、中国、もう一つ言えばロシアのこの隣国ですから、中国はより遠いオーストラリアよりも、中国より遠いオーストラリアよりもはるかに困難な状況に日本が陥らないかということを見るこの著者は、そういうふうな視点を持つかもしれません。  ASEAN諸国は、米国と中国の両方との良好な関係を維持するよう慎重に努力した。間に入っているわけです。しかし、ASEAN諸国が取ったアプローチは、彼らが北京に頭を下げる、叩頭をする運命にあるという意味ではありません。例えば、南シナ海の行動規範の草案を堅持しています。同時に、中国との経済関係を強化し、互恵関係の発展に努めていますとあります。  自分たちの努力と知恵に誇りを持っています。この部分は、この著者個人ではなく、ASEANの外交当局者のかなりの方が持っている自負心じゃないかという気がします。この方々の目には、アメリカあるいは欧米と一体化し、中国と対峙しようとする日本はどう映っているのでしょうか。  オーストラリア政府は日本と緊密になることを祝っていますが、ASEANは経済規模で日本に追い付きつつあり、二〇三〇年には追い抜く、これからはアメリカの世紀ではなくアジアの世紀だと、AUKUSは未来ではなく過去に向かう歩みだということですとも言っています。自分たちの時代が来たという自信にあふれているように思います。  林大臣に伺いますけれども、アジア諸国が自信を深めている中で、日本が今回の協定の両相手国を含む欧米との連携を深め、中国などと対峙する姿勢を深めていることが、アジアにおいて時代遅れと受け止められてはいないでしょうか。  また、ASEANの努力、自負、自信などは、文献を読んだ上での私の考えですが、こういった点について、大臣は、これまでASEANの要人と接して、この肌感覚でどのように受け止めているでしょうか。 ○国務大臣(林芳正君) 国際社会が歴史的な転換点を迎える中で、我が国といたしましては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けて、同志国等との連携を強化してきております。これはインド太平洋地域の平和と安定に資するものと考えておりまして、こうした連携については、ASEAN諸国からも前向きな反応が示されておるところでございます。  フィリピンでございますが、この自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、日本とフィリピンは、安全保障、防衛を含む幅広い分野で二国間協力を強化するとともに、日、米、フィリピンを含む多国間協力を促進してきております。私も今年二月の首脳会談に同席をいたしましたけれども、この両首脳は、日、米、フィリピン、日、米、フィリピンのですね、協力強化に向けた検討を進めていくということで一致をしたところでございます。  また、今年一月ですが、プラック・ソコン・カンボジア副首相兼外務国際協力大臣と会談した際も、同副首相から、この同志国との連携の強化などを定めた我が国の新たな国家安全保障戦略に対する支持が示されるとともに、我が国との安全保障協力を強化していくことへの希望というものが示されたところでございます。 ○高良鉄美君 フィリピンへの言及がありましたけれども、前回の答弁でしたでしょうか、次に考えている同志国のこのような形の協定というのは、フランスとフィリピンを考えているということがありました。  そのフィリピンですけれども、十一日にワシントンで、アメリカとフィリピンの外務・防衛担当閣僚会議、通称2プラス2が開かれました。  これに関する日本の全国紙の十三日の朝刊は、「米とフィリピン 対中で同盟強化 七年ぶり2プラス2」、あるいは、「米比、対中抑止へ協力強化 台湾有事備え 2プラス2合意」などと、リベラル系と言われるものも保守系と言われるものもほとんど変わりはありません。  しかし、海外を見ると、実は違った情報もたくさんあります。配付資料四は、2プラス2より前の四月十日のブルームバーグです。フィリピンは米国の軍事施設が攻撃目的で使用されることを許可しないという見出しで、本文を読みますと、フィリピン防衛のためにしか使わせないと大統領が発言したようです。  九日から十一日の日本の全国紙を確認してみましたが、この発言に触れたものは発見できませんでした。先ほどの十三日の新聞でも、フィリピンのこの方針に触れていたものは朝日新聞だけ。あるいは、ほかの期間を調べても、次に述べる十八日の東京新聞が触れているだけです。それによりますと、十五日は、フィリピンの国家安全保障会議が台湾問題に干渉する意図はないと説明しています。東京新聞以外の大全国紙ではこの内容を報じたものは発見できませんでした。  日本の新聞のみを見て、フィリピンは台湾海峡有事で一緒に戦列に立つ、少なくとも米軍の使用を認めるのだと思った方は多いでしょう。しかし、米国紙のブルームバーグを見るだけでそんな単純な話でないことが分かります。  外務省に伺いますけれども、台湾有事に米国が介入したとします。この場合、米軍がフィリピンを拠点として中国を攻撃することがフィリピンとの関係で可能ですかということをお伺いしたいと思います。 ○政府参考人(岩本桂一君) 本年二月に米国国防省そしてフィリピンの国防省は、米比防衛協力強化協定に基づいて、米軍が使用可能なフィリピン国内の拠点を四か所追加した旨発表したと承知しております。こうした取組を通じて米国とフィリピンの協力関係が強化されること、このこと自体は地域の平和と安定の維持強化に資するものだと考えております。  その上で、今御質問のありました台湾有事、これ仮定の状況でございますので、この点についてお答えすることは差し控えたいと思います。 ○高良鉄美君 今ありましたけれども、この日本、私がずっと言っているのは、日本は孤立していませんかと、大丈夫ですかという、こういう声を少し考えてみたらどうかと。これは保守系の方々もいろいろ指摘をしているわけです。これやはり日本の将来を憂えている方々というふうに、私はそういう方々、尊敬しているわけですけれども、委員の皆さん、とりわけ与党の皆さんには分かってもらいたいんですけれども、皆さんのような戦略を取りたいと考えるとしても、海外の別の視点というものも入れていただきたいなと思います。  今回、私は中国に寄れと言っているわけじゃなくて、これは、間に立ってアジア諸国を見てバランスを取って考えていただきたいということです。やはりこれが、オーストラリアとイギリスとの軍事的協力関係を深めることがどうしても必要だと単純に考えるのに賛成するんであれば、これは後々我が国を危うくする行為だと申し上げて、質問を終わりたいと思います。 ○委員長(阿達雅志君) 他に御発言もないようですから、四案件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより四案件について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。 ○山添拓君 日本共産党を代表し、日豪、日英部隊間円滑化協定の承認を求めるの件及び両協定実施法案四案に反対の討論を行います。  両協定は、日米同盟を中心に自衛隊の海外活動と外国軍との共同の軍事活動を一層強化しようとする措置であり、憲法九条に明確に反します。  岸田政権が閣議決定した国家防衛戦略は、日米同盟の抑止力、対処力の強化にとどまらず、同志国等との連携の強化を明記しました。同志国等とは米国の同盟国、パートナー国を指すことは明らかであり、それらの国々との軍事的協力の強化を図ろうとするのは、インド太平洋地域において、同盟、パートナー関係のネットワーク化と能力強化を進める米国の戦略に従ったものにほかなりません。  日豪2プラス2では、将来、自衛隊のF35をオーストラリアにローテーション配備する計画まで合意しました。日本を守るどころか地域の緊張関係を高めかねず、法的根拠も曖昧です。なし崩しに軍事的一体化を進めることは許されません。  両協定は、派遣国の軍隊の構成員が公務中に罪を犯した場合の第一次裁判権を派遣国側に与えています。外務省は、両協定について、公務中かどうかは具体的な事案に応じて判断されると答弁しました。日米地位協定の下では、米側が公務証明書を発行した場合、日本側はその反証をしなければならず、反証をしても、最終的には合同委員会の協議次第という不当な運用がまかり通っています。日豪、日英間でも同様の事態を招きかねません。外国軍隊の活動のために重要な国家主権である刑事裁判権を放棄することは許されません。  また、日本で死刑が求刑される可能性がある重大な犯罪の場合、派遣国であるオーストラリア及び英国側は日本側に被疑者の身柄を引き渡す義務を負いません。日本が死刑制度を存続させ執行を続けていること自体が深刻な問題ですが、その結果として、重大な犯罪ほど日本側の裁判権が失われるという不平等な内容であり、認められません。  さらに、両協定が、締約国間の協議機関として合同委員会を設置し、協議を行うだけでなく取決めを行うことができるとしていることも看過できません。  両協定には議事録の作成についての規定はありません。外務大臣は衆議院で、仮に作成した場合も、個々の事案ごとに検討し、双方の同意があれば公表できるとすることを想定していると答弁しており、合同委員会の設置前から開示に消極的です。これでは国民の知る権利を侵害し、外国軍隊の活動による問題について国会と国民の監視を困難にします。いかなる国であれ、力による一方的な現状変更が認められず、国連憲章と国際法に基づき正すべきことは言うまでもありません。  その上で政府が今行うべきは、地域の緊張を高める軍事的協力体制の強化ではなく、東アジアを平和の地域にするために包摂的な安全保障の枠組みをつくる平和外交であることを強調し、討論とします。 ○高良鉄美君 私は、沖縄の風を代表して、今回の二条約と二法案に反対の立場から討論をいたします。  今回の協定は、政府が進めている西側諸国との結束を深め、中ロなどと対峙をする戦略の一環と捉えられます。しかし、この戦略は非常にリスクの高いものです。世界の大きな流れとして、西側諸国とその中心であるアメリカの力は相当落ちてきています。サウジアラビアが中国の仲介でイランと国交正常化をしたことは、中東におけるアメリカ離れと中国の存在感の向上を意味するだけでなく、ペトロダラー体制の崩壊をもたらし得る重要な出来事です。  脱ドルの動きは、中ロやBRICS諸国にとどまらず世界中に広がっており、米ドルが基軸通貨の地位から転落する可能性を現実のものとして見なければなりません。経済力で見ても、BRICS五か国の購買力平価GDPはG7のそれを超え、さらに、BRICSに参加を希望する国も多数あり、西側諸国が世界経済を主導した時代は終わりつつあります。  政治的に見ても、グローバルサウスなどへの西側の影響力は低下しています。例えば、世界で対ロ制裁に参加している国は少数派で、アジアでは日本、韓国、シンガポール、仮に台湾を国と数えても四か国のみ、西アジア、南アジアではゼロ、アメリカとカナダ以外の南北アメリカ大陸、アフリカもゼロという状況です。先日のマクロン大統領の訪中の際の発言を見ても、ヨーロッパがアメリカとは違った戦略を取る可能性も無視できません。そもそも、アメリカの民主主義国家が結束して権威主義国家と対峙するという現在の戦略は、あくまで現バイデン政権のものにすぎません。政権が替われば違った戦略が取られます。  このような状況の下で、日本がアメリカの現政権の戦略と整合させる形で西側諸国と軍事的協力関係を深めることは、将来における日本の国際的立場を大いに危うくする極めてリスクの高い行為です。今のような姿勢で中国への対抗姿勢を取っている日本は、アメリカの覇権が崩壊し、あるいは政権交代によりアメリカに中国と融和的な政権ができた場合、独り中国の前に取り残され、どうなるんでしょうか。  台湾を見ると、日本のマスコミにはほとんど紹介されませんが、アメリカは台湾を利用して中国を牽制している、アメリカを信じず、アメリカと距離を置いてこそ台湾は米中対立による衝突に巻き込まれないことができるといった民意は強く、私が本委員会で紹介した民意調査では過半数を超えていました。台湾の人たちは、物事の本質が見えていると思います。そして、戦争の恐怖を我が事としてリアルに感じているとも言えるでしょう。  中国や台湾に近い沖縄でも多くの人が同じように感じています。しかし、国家防衛戦略がスタンドオフミサイルについて我が国の様々な地点からと記載したように、本土の各地に長距離ミサイルが配備されようとしており、本来、本土の人たちも同じように感じなければなりません。日本も、台湾の人たちのように賢明な見方をし、西側諸国とむやみに軍事的に結び付きを深めるのではなく、西側諸国との関係と中国との関係とで日本独自のバランスを取った安全保障戦略を取るべきです。  これに対し、岸田政権は、西側諸国との結束を深め、中ロなどと対峙する戦略を取っており、AUKUSのメンバーであるオーストラリア、イギリスと軍事面での協力を深化させる今回の協定もその一環と捉えられます。西側の結束は、中国から見れば中国包囲網であり、地域の緊張を高める行為であって、外交努力の障害となる行為です。  以上、見てきたように、リスクの高い戦略の一環であること、そして地位協定上の裁判権の問題が含まれていることなどから、今回の協定には反対することを申し上げ、私の反対討論を終わります。 ○委員長(阿達雅志君) 他に御意見もないようですから、四案件に対する討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕 ○委員長(阿達雅志君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕 ○委員長(阿達雅志君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の実施に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕 ○委員長(阿達雅志君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の実施に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕 ○委員長(阿達雅志君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、四案件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○委員長(阿達雅志君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十二分散会